こんにちは。
東京都文京区で「坂本歯科クリニック」を開業しております、歯科医師の坂本祥子です。

皆さんは、定期的に歯科検診を受けていらっしゃいますか。
「はい、ちゃんと行っていますよ」という方も、もしかしたら「特に何も言われなかったから、まあいいか」と、少し受け身な気持ちで検診を終えてしまっているかもしれませんね。

歯科検診は、ただ虫歯がないかチェックするだけの時間ではありません。
いわば、お口の健康状態を専門家と一緒に確認し、未来の健康を守るための作戦会議のような大切な機会なのです。

私自身、子どもの頃に歯並びで長く苦労した経験があるからこそ、患者さんには「分からないこと」「不安なこと」を何でも話してほしいと心から願っています。
この記事では、皆さんが次の歯科検診を120%有効活用できるよう、「これを聞けば安心!」という質問をリストアップしてみました。
ぜひ、あなたのお口の健康を守るパートナーである歯科医師や歯科衛生士に、気軽に声をかけるきっかけにしてみてくださいね。

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まずは基本から!自分の口の中の「現状」を知るための質問

検診の第一歩は、今の自分のお口の状態を正しく知ることから始まります。
人間ドックで検査結果の数値を見るように、お口の中も客観的な指標で把握することが大切です。
まずは、基本的な情報を確認するための質問をしてみましょう。

「今の私の口の中は、100点満点で何点くらいですか?」

少し大胆な質問に聞こえるかもしれませんが、このように尋ねてみると、先生も分かりやすく全体像を話してくれるはずです。
「虫歯はありませんが、歯周病のリスクが少しあるので70点くらいですね」といったように、具体的な評価を聞くことで、自分の課題が明確になります。

この質問をきっかけに、さらに詳しく聞いてみたいのが以下の3つのポイントです。

  • 虫歯の有無と進行度
    • 「虫歯はありますか?あるとしたら、すぐに治療が必要なレベルですか?」
    • 初期の虫歯(CO)であれば、削らずに経過観察で済むこともあります。自分の虫歯がどの段階にあるのかを知っておきましょう。
  • 歯周病の進行度
    • 「歯周病の検査結果について、詳しく教えてください」
    • 歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さは、歯周病の重要な指標です。4mm以上ある場所は注意が必要など、具体的な数値を聞いておくと、セルフケアの意識も変わってきます。
  • 磨き残しの多い場所
    • 「私の磨き方の癖で、特に汚れが残りやすい場所はどこですか?」
    • 自分では完璧に磨いているつもりでも、歯並びや利き腕によって磨きにくい場所が誰にでもあります。その場所を具体的に教えてもらい、歯磨きの重点ポイントを把握しましょう。

これからの健康を守るために!「未来のリスク」に関する質問

現状を把握したら、次は未来に目を向けましょう。
とくに30代を過ぎると、お口の環境は少しずつ変化していきます。
これから起こりうるリスクを先回りして知り、効果的な予防策を講じることが、生涯にわたって自分の歯で美味しく食事をするための鍵となります。

「私の年齢や生活習慣で、今後一番気をつけるべきことは何ですか?」

この質問は、あなただけのオーダーメイドの予防プランを立てるための、とても重要な問いかけです。
例えば、年齢によっても注意すべき点は変わってきます。

  • 30〜40代:仕事のストレスや疲れから、歯ぎしりや食いしばりが増えたり、歯周病が進行しやすくなる時期です。
  • 50代以降:歯茎が下がることで、歯の根元が露出して虫歯になる「根面う蝕(こんめんうしょく)」のリスクが高まります。また、全身疾患との関わりもより重要になってきます。

特に、歯周病が全身の健康に及ぼす影響は、近年ますます明らかになっています。

歯周病は、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、そして高齢の方では誤嚥性肺炎といった全身の病気と深く関わっていることが分かっています。お口の健康は、全身の健康の入り口なのです。

次回の検診までの適切な間隔も、人それぞれのリスクによって異なります。
「次はいつ頃来るのがベストですか?」と確認し、自分に合った検診スケジュールを立ててもらいましょう。

もしも治療が必要になったら?「治療の選択肢」を知るための質問

検診で問題が見つかり、治療が必要になることもあります。
そんな時、慌てずに自分にとって最善の選択をするためには、あらかじめ治療法について知識を持っておくことが大切です。
特に歯を失ってしまった場合の治療法は、その後の生活の質を大きく左右します。

「もし将来、この歯がダメになった場合、どんな治療の選択肢がありますか?」

今すぐ治療が必要でなくても、将来の可能性として聞いておくことで、心の準備ができます。
歯を失った場合の主な治療法には、インプラント、ブリッジ、入れ歯の3つがあり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

治療法メリットデメリット
インプラント・自分の歯のように噛める
・見た目が自然
・周りの歯を削らない
・外科手術が必要
・治療期間が長い
・保険適用外で高額
ブリッジ・比較的、治療期間が短い
・固定式で違和感が少ない
・保険が適用できる
・健康な両隣の歯を削る必要がある
・支える歯に負担がかかる
入れ歯・多くの歯を失っても対応可能
・外科手術が不要
・保険が適用できる
・違和感や異物感がある
・噛む力が弱くなる
・バネをかける歯に負担がかかる

これらの情報を事前に知っておけば、いざという時に「先生にお任せします」ではなく、「私はこうしたい」という自分の希望を伝えながら、一緒に治療方針を決めていくことができます。
それぞれの治療にかかる期間や費用の目安についても、遠慮なく質問してみてください。

毎日のケアが変わる!「セルフケア」を向上させるための質問

歯科医院でのプロフェッショナルケアはとても重要ですが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが、毎日のご自身でのセルフケアです。
検診は、自分の歯磨きや生活習慣を見直す絶好の機会。
ぜひ、専門家である歯科衛生士さんに、日頃の疑問をぶつけてみましょう。

「私の口に合った歯ブラシや歯磨きグッズを教えてください」

ドラッグストアには多種多様なオーラルケアグッズが並んでいて、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
歯並びや歯茎の状態によって、最適な道具は一人ひとり異なります。

  1. 歯ブラシの選び方
    ヘッドの大きさや毛の硬さなど、自分に合ったものを選ぶアドバイスをもらいましょう。
  2. 歯磨き粉の成分
    虫歯予防ならフッ素、歯周病予防なら殺菌成分、知覚過敏なら硝酸カリウムなど、目的に合った成分を教えてもらいましょう。
  3. 歯間ブラシとデンタルフロス
    歯と歯の間の清掃は必須です。「私にはどちらが合っていますか?」「サイズはどれがいいですか?」と具体的に聞いてみましょう。

そして何より、「今の私の磨き方で、改善すべき点はありますか?」と、実際に歯ブラシ指導を受けてみることを強くお勧めします。
正しい使い方を一度身につければ、毎日の歯磨きの質が格段に向上し、それが何よりの予防につながるのです。

まとめ

歯科検診を有効活用するための質問リスト、いかがでしたでしょうか。
最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 現状を知る:「100点満点で何点?」と聞き、虫歯や歯周病の進行度、磨き残しの場所を把握する。
  • 未来のリスクを知る:「今後気をつけるべきことは?」と尋ね、年齢や生活習慣に合わせた予防策を知る。
  • 治療法を知る:「もし歯を失ったら?」と想定し、インプラント・ブリッジ・入れ歯などの選択肢を学ぶ。
  • セルフケアを向上させる:「私に合うグッズは?」「磨き方は合ってる?」と質問し、日々のケアの質を高める。

歯科医師や歯科衛生士は、皆さんがお口の健康について関心を持ってくださることを、本当に嬉しく思っています。
私たちは、皆さんの健康を守るための「パートナー」でありたいのです。

次の検診では、ぜひこの中のひとつでもいいので、質問してみてください。
その一言が、あなたの大切な歯を、そして全身の健康を未来にわたって守るための、大きな一歩になるはずです。
あなたの次の検診が、実り多い「作戦会議」になることを心から応援しています。