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立体格子状ジェル
立体格子状ジェルマットレスの評価(効用、臨床テスト結果)
平成17年7月14日
医療法人財団  青葉会
青葉病院  院長  中條 俊夫
■1.はじめに
 褥瘡対策未実施減算が導入され、褥瘡対策の基準の一つとして「患者の状態に応じて、褥瘡対策に必要な体圧分散式マットレス等を適切に選択し使用する体制が整えられていること」がうたわれてから3年以上が過ぎた。この間、「エアマットレス」を中心としての体圧分散式マットレスの購入のため、各医療施設ではかなりの経費を投入した。それにより、褥瘡の発生を減少させたり、発生した褥瘡の病期を軽度に抑えたり、治療期間の短縮を得るのに成果を上げてきた。なによりも医療界全体が褥瘡医療に関する関心を高めたことに大きな意義があった。
 褥瘡発生リスクの高い人に対してはより効力のある体圧分散マットレスが必要であるという判断から、エアマットレスについてはセルを高くする、コンピューターによる制御を高度化する、などにより高機能化されている。
 他方、高機能マットレスは褥瘡発生リスクの比較的低い人にとってみると、ぶかぶかして船酔い感がある、あるいはベッド上で動きにくいなど不具合なところもあり、また高価で購入しにくく、故障もしやすいなどの問題もある。従って静止型マットレスも同時に開発する必要性があり、静止型においても多種多様なマットレスが日進月歩の勢いで開発、製作されている。それぞれのマットレスに工夫があり、誰にでも最適であるという褥瘡予防マットレスはまずありえない。利用者の状況や要望に応じて、それに適する体圧分散マットレスを医療者が選択する時代になっている。
 そのような開発競争の中で、「立体格子状ジェル構造のマットレス」を使用する機会に恵まれた。当初、厚さが8cmと比較的薄いため、褥瘡発生リスクが高度である場合や、褥瘡保有者に対しては選択適応がないのではないかと考えていた。しかし自分で使用したり、軽度の褥瘡発生リスク者に使用してみた所、体圧分散効果と共に抗ずれ効果もしっかりしていることが分かり、褥瘡発生リスクが中等度から高度の場合にも本マットレスを使用し、良好な効果が得られた。
今回、自験例について報告する。
■2.立体格子状ジェルマットレスの構造と特徴について
1) 素材の主体は格子状のジェル(特殊高分子エラストマー)で、高通気性ポリウレタンフォームと合体させた複合マットレスである。
2) 構造は、ジェルを高さ4cmの立体格子構造状に成型してマットレス主要部材とし、その底面に厚さ5mmの高通気性ウレタンフォームシートで形成させて、セグメントを作る。 セグメント3つを高通気性ウレタンフォームのケーシング(外枠)に納めマットレスとする。セグメントには数種類があり、柔らかさが異なり、いろいろと組み合わせることができる。全体を制菌加工防水カバーまたは高通気性ニットカバーで包む。
3) 特徴(1)体圧分散効果、(2)ねじれ吸収効果、(3)通気性、(4)自然な寝姿勢保持を主たる特徴としている。
自分(体重65Kg)で約10ヶ月使用し、上記の特徴を確認した。
  体圧分散効果は高機能マットレスほどの沈み込みはない。坐位では臀部が底付けするが、仰臥位では底付けしない。広い面積で身体が支えられていることがわかり、柔らかく気持ちよく感じられる。従って、ステージIVの高度の褥瘡を保有し高機能マットレスが不可欠と判断される場合を除き、適応があるのではないかと判断した。
 立体格子状になっているため、柔らかいジェルでできた格子がずれ力に応じてねじれ、急激なずれ応力の発生を軽減する。
 ジェル格子で囲まれた空間は大きく、またマットレスの底辺を構成するポリウレタンフォームは通気性がある構造になっており、通気性カバーを用いた時には通気状態は大変良好である。これによって夏場においても体表の湿潤は感じられない。冬場には保温性もある。
 沈み込みがあまり大きくないので、寝た時の違和感はない。体動時の不安定感もない。
 その他、耐久性にも特徴がある。通常のポリウレタンフォームマットレスは水を吸収すると変質するといわれ防水カバーが不可欠であるが、本マットレスの主体をなすジェルは水分で汚れても変性せず体圧分散効果は維持される。汚れた場合にはケーシングからセグメントを外して洗浄することもできる点は有利である。エアや水を通すセルは穿孔などによる故障が時にあり、また災害などの停電では機能しない問題もあるが、本マットレスはその心配はなく、耐久性に優れており安心できる。
■3.マットレスの評価
病院において立体格子状ジェルマットを臨床で使用したので、その結果を報告する。

1) 評価したマットレス
立体格子状ジェルマットレス(インテリジェル IG001DT)

2) 評価期間
平成16年8月3日から平成17年7月14日 約12ヶ月間

3) 臨床利用者と使用延べ日数
利用者の内訳は、OH(大浦・堀田)スケール評価で褥瘡発生リスクが軽度レベル1名、高度レベル7名の褥瘡非保有患者8名、潰瘍発生後に転院してこられた褥瘡ステージII1名、III1名、および糖尿病を基礎疾患として下腿にステージIII褥瘡を発生した1名の総計11名であり、本マットレス使用延べ日数は7月14日の段階で1,479日である。

4) 評価法
利用者の状況を詳細に観察し、本マットレス使用中に褥瘡が発生したか否か、褥瘡の局所経過はどうであるかを記録し、使用感を含めてマットレスの適性を判定する。

5)評価結果
結果をまとめると;
(1)意思表示の可能な利用者7名からは、「柔らかで気持ちよい」との回答が得られた。通常の硬いマットレスと異なり臀部などの痛みの訴えはなく、多少でも動ける方からはベッド上での体動に不便であったという訴えはなかった。マットレスに関しては快適な環境を提供できたという自覚的結果であった。
(2)使用開始時には褥瘡を保有していなかった8例のうち、OHスケール7点の第1例に仙骨部 褥瘡ステージIIが発生したが、21日で完治した。本例はターミナルの状態であり、治癒後13日で死去された。他の7例では褥瘡の発生はなかった。
(3)本マットレスを利用した褥瘡保有者は3名である。第5例は入院時にあった外踝部ステージIIの褥瘡がほぼ治癒したが、その後重篤となり死去され、その際に褥瘡も悪化した。他の2例の褥瘡は完全に上皮化し治癒した。
■4.検  討
 11例中2例に褥瘡の発生あるいは悪化が見られたが、2例とも重篤になる以前は褥瘡非発生あるいは殆治であり、ターミナル状況になった時点から褥瘡発生あるいは増悪が見られている。この2例以外にも、亡くなる前の全身状態重篤化に伴い褥瘡が発生または増悪する例は少なくなく、これはある程度不可避ではないかと考える。
 その他の利用者では褥瘡は治癒または非発生であった。自力体位変換が不能であるなど褥瘡発生リスクが高い場合でも、2時間毎の体位変換と合わせれば、本マットレスは褥瘡発生を高率に予防できるマットレスであると判断する。
 ただし、本マットレスは「静止型」であることから、ステージIVおよび重度のIIIの褥瘡保有者に対しては使用が適当とは考えていない。 使用感については、利用者本人からは柔らかで快適であるという返答が得られ、医療者からは破損しにくく、扱いは容易であり、問題はないとの回答が得られた。
■5.まとめ
立体格子状ジェルマットレス(インテリジェルIG001DT)使用により、褥瘡予防、改善の面で優れた結果が得られた。本マットレスは、病院や介護現場で有力な効果を発揮するものと判断する。柔らかで使用感もよく、これにより「快適な睡眠」も提供できるマットレスであると思われる。
 また看護・介護現場にとっては、(1)故障や破損がほとんどなく、耐久性があり、空気抜けによるアクシデントもなく、また停電による機能停止がないという点で、褥瘡予防具としての信頼感がある、(2)ベッド上での動きやすさも「ポリウレタンマットレス」と同等に容易である、(3)褥瘡予防の段階から治療の段階まで継続的に使用でき、マットレスの入替えの手間が省略できる、などの利点が挙げられる。
 そのほか、本報告では特に検査・検討はしていないが、「制菌赤ラベル」付の防水カバーを使用すると「MRSA」の増殖予防ができる、という利点がうたわれている。
 以上から、今後大いに活用したいマットレスといえよう。
実施/評価機関: 医療法人財団 青葉会 青葉病院
評価/報告担当: 院長 中條俊夫
日本褥瘡学会理事 北里大学医学部教授(外科)、国立小児病院外科医長、
東京大学医学部教授(小児外科担当)、
神奈川県立がんセンターセンター長などを歴任
現在は、青葉病院院長
北里大学客員教授、神奈川県立がんセンター顧問、関越病院顧問などを兼務
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